殺虫・防虫剤の支出が増加中という事実

 消費は伸び悩みで、消費財の種類によっては右肩さがりである。「モノからコトへ」と支出が変化していると伝え聞くが、大それた夢や周囲がうらやむような贅沢感のある消費よりも、自分の大切にしているものにプラスとなる消費に人々の関心が向いているのは事実である。


 ■デング熱の影響も

 漆喰の壁、暗い縁の下、蜘蛛の巣だらけの屋根裏をもった昔の木造家屋に比べれば、現代の家は安全かつ衛生的であるはずだ。しかし、ゴキブリやネズミなどにとっては、むしろ豊富な食料や安定した室温のおかげで生息環境が向上していると言えるなくもない。

 次のグラフは「殺虫・防虫剤」の家庭における支出と、消費支出の合計の推移を表している。

 支出は消費の変化や給与の低迷で右側にゆるく下降しているが、「殺虫・防虫剤」は消費額は少ないとはいえ右肩上がりだ。デング熱の感染者が70年ぶり発生した2014年をピークにやや落ち着いた感があるものの、新たな提案製品が増えれば、支出はもう少し伸びる可能性がある。


 ■不快・不安を忌避

 この特徴を一言で表すと、”不快・不安なものを敬遠”したい欲求である。肌を噛まれる、衣類を食い破られ、ある種の病原菌を媒介するなど虫類の実害はたしかにある。しかしそれ以上に、虫類が身近にいると想像するだけで我慢ができなくなってきているのではないか。抗菌製品が人気があるのと同様だ。

 これら殺虫剤や防虫剤の価格は、さほど高いものはない。製品が目にふれ、その人の欲求のなにかと合致すれば、購入に至る可能性が高い。その欲求とは”不快・不安な思いはできるだけ避けたい”といったものだ。

 贅沢とは縁遠い生活をしなければならなくなった今、そんな小さな不快・不安感も解消したくなる心理が働きやすいと考えられる。土地や車やブランド品に目が向かいがちだった時代は、些細な”不安・不快”は気にならなかったのかもしれない。


 ■「答え」は大きな潮流の中にあることも

 人類の最大の脅威であり、最強の天敵は「蚊」だと言われている。致命傷になる感染症の病原菌を媒介できるからだ。地球温暖化で蚊の発生に適した環境は、徐々にではあるが確実に拡大している。時折りインプットされるそれらの情報も、直接ではないにしても消費に変化を与えている。

 まず最初に世間世相の流れを読むことが、商材開発の上ではますます重要になってきた。直接消費者に意見を聞くよりも、よほどニーズを先取りできそう現象がないとも限らないのである。

   

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