消費のトレンドとマーケットの趨勢

■伸びる支出と減少する支出が明確化

 経済成長期では給与も潤沢で、必要不可欠ではないものにも支出されていた。それが絞られているのが今日の状況だ。さらに年代別の人口構成比が高齢者に厚くなった。子供が減れば教育への支出が減少する。

 一方で、光熱・水道費など上昇傾向が続いてきたものもある。そして原材料費の価格上昇が転嫁されている食料費も、ゆるやかに支出を増やしている。

 下の左側のグラフは世帯当たりの支出が上昇傾向の5種、右側のグラフは減少傾向の5種だ。

 食料、光熱・水道費以外では、家具・家事用品が家庭用の消耗品(袋類や洗剤等)を中心に支出を上昇させている。家具などが好調なわけではなく、日々の暮らし・家事に必要な品目が、利便性や安全性の追及で製品が増え、支出を増やしているのである。

 交通・通信は携帯電話の通信費、保健医療は高齢化にともなう医療費もあるが、家庭用の医療品などの支出が小さくない。

 減少傾向の支出では家賃の下降が大きい住居費、大型の娯楽機器等の支出を中心に伸び悩む教養娯楽、安い衣料品が増えた被服及び履物、少子高齢化の影響を受ける教育費となる。


 次のグラフは世帯の年間の総支出(支出の合計)に占める各品目の比率の推移である。食料(食費)の比率の上昇が認めれ、家計に余裕が不足しつつある証と言える。

■支出の動向と企業変革

 必要不可欠とはいえ、光熱・水道費はできるだけ支払いたくないとほとんどの消費者が考えているだろう。省エネルギーな住宅や家電、水回りへの提案は、以前にも増して訴求力が高まっているはずだ。

 食料も安いに越したことはないが、むしろ「健康のため」や「食を楽しむ」などの付加価値を求める動きが強まると予想できる。

 被服や履物は、コミュニケーション世代にとっては生活上重要なアイテムのはず。安い衣料品店の商品でいかに自分らしくコーディネイトするかなど、消費者が賢くなった結果による支出の低下もある。

 所得の減少による買い控えを要因とするところは大きいが、その環境に合わせた消費に進化していると考えた方が適切である。つまりその動きをとらえ、素早く商品のコンセプトや製造や販売の体制を変革できる力が企業に求められるのだ。

 製品やサービスそのものの質もさることながら、変化への対応の迅速さの比重が増していると読み取れるのである。


■異なる価値の見極め

 商材を完璧に完成させたいあまり、企画や製造に時間を投下することは得策ではないという時代になってしまった。「巧遅より拙速」が優位というおかしな状況とも言える。

 しかし一方で、変わらないもの、本物志向なものなどが根強く指示されているのも事実。例えば万年筆が若者に小さなブームを起こした。「変化に順応するもの」と「変化の中で変わらぬ価値のあるもの」の双方をポートフォリオとして商材に持つことも重要なのである。

 今、手もとにある商材や経営資産を、そのどちらに振り分けるかも大切ということだ。


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