■鮮明になってきた人口減少
2017年4月、国立社会保障・人口問題研究所から平成29年推計値として日本の人口の将来推計が公表された。日本の人口は遠くバブル経済のころ(1986年の後半)から減少方向が予測されていたものの、改善の効果的な手が打たれず、晩婚化や生涯独身者の増加をそのまま進行させるに至り、平成27年の国勢調査の結果では明確な減少過程に入ったことが認識された。
出生率が低下し、高齢者の人口構成比が高まることで、労働人口や消費に影響が及ぼされるのみならず、人口が減少することでGDPの6割ほどを占める個人消費がそのまま縮小する。同時に個人を対象とした企業の経済活動も停滞することとなるため、企業はこのマイナス部分を補えるような事業活動をしなければならなくなる。
メディアについても同様で「視聴率」のような”割合”で効果を測定する考え方から、「浸透度」や「視聴者の評価」などの尺度も必要になってくる。インターネットも人口推移の影響を受けることになり、「ページビュー」による広告料の算出では、ネットメディア乱立の状況下に採算は厳しくなる一方になるだろう。
■中高年の増加は映画や文芸等に興味のない層を増やす
食事や衣服、自動車や家電などの耐久財への消費が活発なのは40代後半から50代以降の世代である。しかし一方で、年齢の上昇とともに映画や音楽、読書など芸術関連への関心が低下する傾向がある。古い年代がそういうものに興味が低いのではなく、加齢とともに薄らいでいくと考えたほうが正しいだろう。高齢化することで芸術品などに興味のない層が増えることになり、視聴者や読者として引き入れるには幼少期や青少年期の体験に合わせたコンテンツの企画など工夫が求められるだろう。
上記のグラフは、映画と読書、音楽について年代別の興味の度合いを表している。映画では、映画館に足を運んでいる人とレンタルや有料動画配信を利用している人たちを合わせた率で見ても、やはり年代の上昇とともに映画やドラマに興味を持つ人は下降傾向になると読み取れる。とくに40代を過ぎると興味の落ちる度合は高まるともとれる。
「1カ月に本を一冊も読まない」(上グラフ)でも年代の高まりとともに読まない人が増える。40代以下は2002年から継続的に「読まない人」が増えており、この年代はインターネットによる影響も大きい。「音楽との関わり方」(同上グラフ)でも、音楽への無関心層は年代の上昇とともに増えている。また「無料視聴層(既知楽曲のみ)」は年代の上昇とともに高まり、知っている音楽のみをくり返し聞き、お金を払ってまで新しい音楽を入手したり知ったりしようとする意識が低下していくことになる。
■興味が分散化
余裕時間の減少や金銭的な問題をメディアの接触率の低下の理由として挙げられることが多いが、年代とともに興味が失われるうえに、若い世代でもグラフに示したように音楽を例にすれば「無関心層」が増える傾向にある。インターネット上のゲーム、SNSでのコミュニケーション、無料の動画配信サイトなど、多くのものに興味が向かいやすい環境になったことが大きい。「コンテンツの質と視聴・閲読率が比例しない時代」なのである。
視聴・閲読層の変化により、これまでの基準でのコンテンツの優劣で視聴率や購読率が変わるという考え方ではなく、視聴率や購読率は低下するという前提で、そのコンテンツに合った対象者にどう到達するかのほうがより重要になる。
もちろん、コンテンツは重要であり、おろそかにできるものではない。優良なコンテンツならば、なおのこと必要とする人への到達を考えた施策が重要であるということになる。インターネットがない時代は、映画、テレビ番組、雑誌や書籍、そして新聞は大きくこの4社での競合と協業だった。視聴者や読者への到達度が低くても、採算が合う視聴者や読者を確保できていた。メディアや娯楽が多様化した現在では、到達力を高く保たないと充分な視聴者や読者が得られなくなってきている。
【メディア/コンテンツ ビジネスモデル・評価の見直し】
① メディアとしての評価軸の見直し。
② ボリュームビジネスからの転換。
③ターゲットを明確にそれぞれの小さなマーケットを複数持つポートフォリオ。
④他メディアとの差別化。
⑤他メディアとの相乗効果。
弊社『メディア利用人口/利用総時間の予測とマーケティング 2017』より
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