落ち込む米の消費と成長する会社

 アンケート調査を行ったのなら、若者も含め日本人の多くは「米が一番好き」と答えるだろう。

 しかしその消費実態は先行きが心配される深刻な状態。下のグラフは総務省「家計調査」による総世帯(単身世帯含む)の支出推移である。米への支出金額は落ち込み、グラフには表されていないが数量も下降している。価格の安い米が出回り、そちらへの支出の推移も認められる。

 一方、パン(食パンおよびその他<調理パンは含まず>)類は順調に支出を伸ばしている。

 日本人の食の洋食化は緩やかに進行しておりその影響がひとつ。外食や食材、調味料や調理食品などで洋食メニューが増えたのもある。そこには洋食を好む味覚の変化とともに、米などを焚く手間を敬遠する行動も背景として大きい。

 また米は家族が大人数のときは効率がいいが、少数の場合は焚き上げる量の調整が難しく、余った場合に日持ちが長くないなどの問題もある。近年は世帯人員の減少、単身世帯の増加から食べ切り食品への支出が増えている。例えばカップラーメンやインスタントラーメンなどが穀類の中では該当するが、パンも米よりは食べ切りにしやすく調理の手間もかからない。

 そういった状況のなか「サトウの切り餅」「サトウのご飯」でおなじみのサトウ食品工業㈱は、売上を堅調に推移させている。

 米ともちの総支出(世帯別の支出平均×世帯数)と同社売上の対比では2.6%に該当(弊社推算値)。スーパーなどでの販売されている棚との関係からみると、納得できなくはない比率だ。このシェアがどこまで伸びるか興味のもたれるところ。より炊き上がりの米に近い味の再現などが課題だろう。

 日本の市場は総じて人口の減少や企業業績の伸び悩みの影響の賃金の停滞などから、横ばいや下降傾向を続ける公算が強い。しかし、ニーズにマッチした商材ならば売上の拡大ははたせる。ただその規模は、ごらんのとおり小さくなる。

 どの会社でも、これらかの新規ビジネスはどれも市場規模は小さいはずだ。それを想定し、問題なく採算がとれるような体制で臨むことが重要である。


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